設立50周年を迎えて(理事長挨拶)

国営耳納山麓農業水利事業は、筑後川中流域の農業用水・上水道用水を確保するため、昭和38年2月に「筑後川河南地区水資源開発期成会」が結成され、以来地域一丸となっての運動と各界各位のご尽力により、九州で初めての国営総合かんがい排水事業として、昭和47年10月に「九州農政局耳納山麓農業水利事業所」を開設し、昭和48年12月には耳納山麓土地改良区が設立され、今年で50年目の節目を迎えました。

本地区は、筑後川中流域左岸の耳納山系の山麓沿いに細長く展開する水田並びに樹園地からなり、久留米市、うきは市の2市にまたがり、現在その関係面積は、3,519ha、受益農家戸数は約5,600戸を数えます。

設立当初は、耳納山麓総合かんがい排水事業や関連する国営附帯県営事業の推進母体として、事業の完了後は九州農政局北部九州土地改良調査管理事務所と緊密なご指導のもと耳納幹支線水路の施設管理や配水管理の任に当たってまいりました。

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この間、幾度となく渇水による用水の取水制限や豪雨被害を繰り返し、特に平成6年の大渇水や平成24年、平成29年並びに令和5年の九州北部豪雨災害では、当地区の取水口がある夜明ダム上流の護岸や用(排)水路が被災し、取水が困難になるなど大変な時期もありましたが、組合員のご理解とご協力をいただきながら、柔軟な配水管理に努めてまいりました。

そのような業績が認められ、全国土地改良事業団体連合会から成績最優秀土地改良区として金賞を受賞するなど、今日まで堅実に運営を行ってまいりました。これもひとえに、組合員の皆様はもとより、国、県、市など、多くの皆様のご支援、ご協力の賜物と心から深く感謝申し上げます。

なお、施設管理につきましては、日常の業務として職員が一丸となって適切に管理してまいりましたが、国営事業完了後30年が経過している施設の老朽化対策が課題となっており、今後は、営農の現状と地域農業の将来像を踏まえた施設の再整備を実施し「産地収益力の強化」、「農業競争力の強化」を図り、次世代へ受け継がれていく施設の再整備を図っていくことが肝要であると考えています。

一方、農林水産省では、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、農山漁村における再生可能エネルギーの導入促進を進めており、その推進が図られています。特に農業用水を活用した小水力発電は、各種の再生可能エネルギーの中でも安定しており、九州農政局より合所ダムの小水力発電の導入・可能性調査が実施され、十分な発電能力が示されました。このため、発電により生じた電力は、土地改良施設の操作に必要な電力を直接供給することができるなど、維持管理費を節減して健全な土地改良区の運営を行うためにも、必要不可欠と考えており、小水力発電事業の取り組みを進めて行くこととしております。

設立50周年を迎えた耳納山麓土地改良区はこれまでと同様に耳納幹支線水路の維持管理と配水管理を適切に行っていくことはもちろん、農業後継者の減少や農業を取り巻く情勢の厳しさと相まって、受益地の転用の増加など、今後の運営管理において益々複雑かつ困難化する課題を克服して行く必要があるものと考えております。

最後になりますが、農業を取り巻く環境は大変厳しさを増しており、大きな転換期を迎えておりますが、今後とも、引き続き、ご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

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